桜とバイクしか出てこない、ちょっとした旅
缶コーヒー ・ ツーリング

2013/3/29(金) 午前 11:05



これからちょっと東北にでも走りに行ってみるかな。

方角とタイミングが合えば、コンビニ前で缶コーヒーでも飲んで世間話をしよう。
気が向いたら連絡ください。

ほなまた。


いつか来た道ィ
2013/3/29(金) 午後 10:33

なりゆきで一週間ほど休みになったので、たまにはツーリングなどしてみる気になった。
が。
日本というのは、やっぱりあんまり広くはないようだ。

どこを走っても、なんとなく見覚えがある。
前もバイクで来たなーとか、一輪車で走ったなーとか。
コンビニやホームセンターなどを見かければ、
そこで休憩した時の疲労感や、何を買ったかまでがスルスルと思い出されてくる。
過去の記憶ってのはさほど印象的でなくても案外と消えないものなんだな。

以下はツイッターでちょこちょこアップしていた現在地。



神戸。



大阪。



京都。



そして敦賀。
今日はここで終わりだな。

琵琶湖の西岸を北上してた時の強烈な西風、その名も比叡おろしってやつは結構キツかった。
バイクが足元からすくわれそうになってビビりまくったよ。
何度か通った道でも、来る時によってはまた違った体験を味あわせてくれるってことだ。

今日はまあ、こんな感じ。

淡々と走り、何かを感じている。


ワンダラーズ・ハイのこと
2013/3/30(土) 午後 9:54

北陸の春は遅かった。



敦賀の道の駅を薄暗いうちに出て、完全に明るくなったころに金沢に着く。
この間、気温4度ぐらい。
寒い。
CD90を念のため、レッグシールド・風防・ハンドルカバー付きの北海道用冬仕様にしておいて本当によかった。
しかし、何事にも完璧ということは、なかなかない。

地下足袋を履いた足だけがとても冷たいのだ。

足先にやり場のないダンディズムを感じつつ、俺は走る。



富山。

魚がうまいところだがいつもどおりそんな気分でもない。
しかし、うまいラーメン屋があったらしいと通過してから知り、自分でも意外なほど残念がる。
自分の食いたいものは時として、自分自身でもわからなかったりするものなのか。
不思議だ。
ツーリングをしていると、よく変わったことで悩む。



富山から新潟にかけての海岸線には、
昔から難所として名高い、親不知という断崖絶壁エリアがある。

今では誰かが苦労してキチンとした道を造ってくれているのでさほどでもないが、
それでも毎回オオッと感じるぐらいのグネグネ断崖ロードではある。
そして寒い。
岩壁の桜、まるで咲く気なし。



いよいよ新潟、上越。

山が真っ白で町のあちこちに雪が残っているのは勘弁して欲しい。
この先、内陸に入れば標高が上がるのだが、果たして大丈夫なのだろうか。
一応保険として、近道である3ケタ国道はパスして少し遠回りの2ケタ国道18号線をチョイス。
道が広くて通るクルマが多ければ多いほど、よりなんとかなるだろうという考え。

このあたりで気温1度。
紛糾していた脳内国会で地下足袋限界派がついに過半数を超えたので、
最寄りのホームセンターにて防寒長靴を買う。
シーズン遅れの処分特価で2680円。
これは温かい。地下足袋とはくらべものにならない。
あたりまえだ。



ズンズン内陸に入り込んで、松本。

道路状況は思ったほど悪化せず、結果的には何の心配もいらなかった。
標高の高い松本や諏訪湖のあたりで雪がなければ関東まではまず問題ないだろう。

ここでもし仮に、雪道になっていたら?
あっさり引き返していただろうな。
そんな想像をして、なぜだか笑いがこみ上げてくる。
こういう時の自分は大丈夫だ。
何もガマンしていないし、何も迷っていない。
だから何も心配ない。



すっかり夜になった国道20号線をピリリと直進。
そのうち甲府だ。

順調に標高が下がってきているのがわかる。
逆に気温は上がってきて7度ほど。
少し雨に降られたが、これぐらいならまだいける。
長靴も買ったし、そもそも雨には慣れている。

今夜はこのオートバイの放つ軽やかな律動、生真面目な滑り出し、ノロンとした存在感が特に素晴らしい。
こんな瞬間はできるかぎり、このバイクと戯れていたいと思う。
バイクに乗って幸せな気分に浸っていた時間が俺にもちゃんとあったのだということを、しっかりと覚えておきたい。

そんな気分がまだ少し続いているうちに、今日はストップだ。
このままだと真夜中の首都に突っ込んでしまうからな。


笑って死ぬために今生きてるにきまってる
2013/4/1(月) 午前 4:53

甲府の道の駅で寝袋にくるまって寝ていたら、深夜の結構な寒さですぐに目が覚めてしまった。
気温は5度ぐらいなんだろうが、
一輪車日本縦断のとき2枚重ね用に買い足した安物ホームセンター寝袋じゃちょっと荷が重いかね。
仕方ないので3時頃には起き出して出発。



山梨県東部、大月。

山梨から東京多摩地方にかけて、無数のこまかいカーブを繰り返しながら下っていくこの道。
行楽シーズンはクルマが数珠繋ぎになるところだが、さすがにこんな時間だと、怖いぐらいの一人旅になる。
霧雨で濡れた路面に気を配り、ゆっくりと飽きるほど曲がり続けて、下り道はやがて八王子へと至る。



八王子。

着いたはいいがまだ暗い。おまけに雨。そしてとにかく眠い。
この規模の街になると、もうその辺で寝転ぶというわけにはいかないのが面倒である。
しばらくさまよったあげくに見つけた橋の下で少し、だが深く眠る。

この八王子では、ツイッターで知り合ったドリさんと初めて会う。
台湾好きでちょっと珍しいバイクに乗っている年配の男性というイメージだったのだが、
実際には40代の若々しい爽やかオシャレさんで驚いた。
オシャレなのも当然、彼はアパレル業界で活躍する人物だったのだ。

一度気に入った服を毎日着ていられたらそれでいい、オシャレとは完全無縁の俺。
だがドリさんが熱くかつ丁寧に語ってくれる、服の世界の話がすんごくおもしろい。
それは自分の中にはまったくない視点で物事をとらえ、突き詰め、そして評価されている人の世界だ。
進んでゆく人にはやはり興味を惹かれる。
ジャンルの違いは問題ではないのかもしれない。
溢れるエネルギーを注ぐ対象が違うだけなのだ。

人と会い、コーヒーを飲みつつ話をするというだけのこと。
ただそれだけのことが、一人で黙って生活していると自動的に出来上がってしまう枠を、簡単になくしてくれるようだ。
これはいい旅になるかもしれないと、ここに来てようやく思えてきた。



立川。

次の約束が世田谷であったので八王子から世田谷へ向かっていると、
これまたツイッター経由で、思わぬ人物から連絡が届いた。
一輪車で主にトライアル系の活動をしているunitryboy君。
立川の河川敷にあるトライアル練習場にいるので、遊びに来ませんかとのこと。
ふむ、世田谷の約束まではまだ時間があるなってことで、さっそく立川へ。

想像よりは広くない、私設っぽい自転車トライアル用の練習場。
そこに彼は、一人でポッツーンと座っていた。
うわ、さびしそう。そりゃ誰か呼びたくなるわ。

あまり予備知識もなく初対面のunitryboy君。
いまどき珍しいと言いたくなるような素朴な笑顔の好青年だなーと思ったらなんと16歳、高校生。
一輪車トライアルの練習場と仲間を求めて、わざわざ長野から東京まで来ているらしい。
ほへー、そこまで熱心なのか!
テクもさすがはユニトライアル少年部門日本一、
レベルが高くて素人の俺にはむしろ簡単そうに見えるが、まったくマネはできない。

そのうちようやく自転車トライアルの練習者もポツポツ来はじめたよってところで、
おもむろに出現したのがあのGo_Go_wheelsさん。
一輪車で日本を縦断してた時、
36インチの巨大ユニで新宿アルタ前まで走ってきてド肝を抜いてくれたユニサイクル仲間だ。
それがおいおい、今度は高さ160センチ超の長ーーーい一輪車、通称キリンさんをひっさげて登場かよ!
いやぁ、この人はあいかわらず楽しいことをやってくれる。

そこからは、3人それぞれの方向性をもった一輪車乗りの交流でがぜん賑やかに。
自転車トライアルの方々にも気さくに接していただき、立川の河原はうすら寒い気候を無視して熱を帯びた。
時間を忘れて話しこみ…って、ああ、世田谷に行くんだった。
一輪車のおかげで繋がれた2人に別れを告げ、ふたたびオートバイで渋滞必至の国道へと戻る。

この時のたんのしー様子&世界を目指すunitryboy君の超絶テクは、
近々Go_Go_wheelsさん製作のクールな動画になって世界に発信されるハズだ!(これを丸投げという)

(その後、unitryboy君のブログ上にて発信された

ところで笑顔が素敵なunitryboy君に一輪車では何もアドバイスできることがないので、
学校の教室でトライアルユニを乗り回したらモテる!とか散々ふかしていたが、あれはウソだ!
いやウソではなくて、ただの妄想だ。
自分がモテないのにモテ術を語るような怪しいオトナに騙されてはいけないぞ!



日曜の都心の国道は、どうしてこうも進まないのだろう。
東京のドライバーは本当に忍耐強いなと感心する。
で、世田谷区。

彼には今朝、急に連絡してやったのだ。
「いま八王子。時間あったらコーヒーでも飲まん?」と。
約10年ぶりの再会である。
ほとんど使っていないフェイスブックの数少ない成果だ。
クレモン組長!本当にひさしぶり。

彼は俺の初めての長旅、バイクで日本一周の時に出会った、俺的最古級のバイク仲間だ。
おたがい生きてまた会うことがあろうとはね。
今では結婚して子どもが2人+さらに増加中。
あのエッジの効いてた顔がどんなことになってるやらと思ったら、やっぱりすっかり丸みを帯びてまぁ。
いやでも、俺はずっとこの人はいいオヤジになると思ってたよ。

子ども生活感まるだしのアパートの一室にて、彼お手製のスペアリブをごちそうになり、
テンション高めな子どもたちや明るい奥さんも交えて、昔と今の話で笑い合えるひととき。
変わるものと変わらないものが、同時に存在する。
ひたすらそんな気分だ。

ほのぼのとしたクレモンハウスを辞し、俺はふたたび都心の国道へと戻る。
そして今度は横浜方面へ。
途中でうっかり自動車専用道路(原付おことわり)を走ってしまったような気もするが、知らん。
東京の道はつくづくわかりにくいんだよ!なんて毒づいてる間に神奈川県。
去年の春、イタリア人ヴァレリオの結婚式2次会でも来たような記憶がある藤沢の街で、今はとにかく寝る。

今日は忙しかった。
眠くて仕方ないんだ。


たった1日をたいした1日にしたくて
2013/4/2(火) 午後 7:50

昨夜は神奈川県は藤沢市のネットカフェに入り、すぐに寝てしまう。
東京での一日で起こったいろんなことを日記に書いておきたかったのだが、ああも眠いともうダメだ。
まあ今回は、日記を毎日更新する!というほどの律儀な旅でもない。
適当でいいわ、適当で。

しかし適当にはできないこともある。
朝6時、充分間に合うな。
では早朝の待ち合わせに出発!



早朝にもかかわらず湘南台の駅まで来てくれたのは、
バイク&マウンテンユニ仲間のBANTLINEさんだ。

去年までは地元の岩手で活動していた彼、今は仕事の都合で神奈川にいる。
花粉症対策のマスクをつけた彼と再会して駅近くのマクドに入り、コーヒーを飲みつつ近況報告。
そして彼とはおなじみである30代独身男性喜怒哀楽トークを繰り広げ…と思ったら、
あれ、なんかちょっと様子がおかしいぞ。
怪しい。実に怪しい。
フィレオフィッシュを消化しながらそれとなく探りを入れると、やはりだ。

詳しくは書けないがBANTLINEさん、なんだかおめでたいことになっているらしい。

いやーまいったなぁ。朝からとても良い話を聞いてしまった。
ふっふっふ。
彼に見送られてバイクで走り去りながらも、メットの中でニヤケ顔がおさまらない不審な俺であった。

さて今朝は少々忙しい。
今度は横浜に向かうぜ!



藤沢から小1時間走って、横浜へ。
指定のコンビニ前にて、ツイッターで知り合った、いりったーさん(犬連れ)と初対面。
普通なような不思議なような独特のツイートがおもしろくて興味があった人だ。

小川に沿った遊歩道のベンチで缶コーヒーを飲みつつ、
台湾の話やマジメでビクビクなところがかわいい愛犬・小枝ちゃんの話題で楽しむ。
本人いわく横浜のチベットと称されるらしい、この静かな町がとても気に入っているそうだ。
小川と遊歩道と、通り過ぎる温和な愛犬家たち。
この人の雰囲気は、たしかにこの町にぴったりと合っているように思える。
町にはその町に似つかわしい人が住んでいるのかもしれない。
これ、ちょっとした発見。

よーしこれで関東での約束は制覇したな。
次はいよいよ東北!
…なのだが、原付で横浜から東北って、すぐには行けないんですよ奥さん。

気の利いた近道も知らないので、ここは正攻法で挑むしかあるまい。
横浜から国道1号線を走ってー、東京に入ってー、
東京タワー見てー、霞ヶ関で多忙を極めてるっぽい官僚たちを眺めてー、
皇居をグルッと回ってー、日本の道路の基点である日本橋を通過してー、
間違えないように国道4号線に乗ってー、走ってー、走ってー、
そしてやーーーっと、埼玉に抜けるのだ。

長い。長いよ。ほんっっっとにめんどくさい。
多すぎる人もクルマも信号1コずつ止められる勢いの渋滞ももーーーういい!
埼玉から栃木へと北上する流れでグングン快適になっていく、広々とした道のりの爽快さといったら。



埼玉県の杉戸町ってところ。

今日はこの旅で最高のいい天気。
気温も暖かく、桜もあちこちで花ざかり。
これぞバイク・ツーリングって感じだね!いいよいいよー!

気の向くままにアクセルをひねってバーリバーリと北上し、宇都宮の手前で舵を切る。
俺にとって栃木県といえばこの町だ。
ここを通り過ぎては叱られる、めざすは芳賀町!



はい芳賀町。

この町に来るのも何度目かな。
来たのはもちろん、バイク仲間のbyp氏夫妻に会うためだ。
それはいいんだが…。
彼の奥さんがまた、なんというか変わった習性をお持ちの方で…。

俺の姿を見るだけで、なぜか楽しくなって笑いがこみあげてくるらしい。

そんな彼女にひさしぶりに会って真っ先に言われたのがこれ、「顔色が悪い!」。
次に言われたのがこれ、「手の色も悪い!」。
えーっ、そうかなぁ!?
自分では最近わりと健康なほうだと思うんだが。それって単にうす汚れてるってだけでは。
それはそれとして、あいかわらず仲睦まじい夫婦なのが微笑ましい。

毎度お世話になってしまうお母さんにはまたしても大量の食料に加えてなぜか古民具までいただいて、
byp夫妻と俺は近所のガストにおもむいてメシを食う。
聞くところによると、明日は午後から雨のようだ。
ふーん、それじゃあ今夜どれだけ進めるかが重要になってくるな。

19時、二人に見送られて再び走り出す。
とりあえず栃木は出とかないとなぁってことで、那須塩原を突破。
福島県に走り、白河、郡山と調子よく進む。
夜の国道は空いていてペースは速い。
一輪車では大変だった峠道も、バイクなら何もつらくない。
ただちょっと寒いだけだ。
23時。
雨予報がなければここまでは来なかったであろう、福島市で今日はストップ。

それでも明日は降られるんだろうが、それもまたよし。
なんせ今日はこれだけ天気が良かったんだからな。
こんな風に、桜の舞い散るなかを一日中、笑顔で走り続けた時間が今まであっただろうか。

人生でもツーリングでも株でもなんでも、
最高の時ってのは、自分ではわからないものなのかもしれない。


風の線、花の雨
2013/4/4(木) 午前 5:27

雨予報の福島。
今日はきっと、雨雲との熾烈なチェイスになるのだろう…。なんてニヒルに考えていたら、
福島市のネットカフェを出た瞬間にはもう降っていて、いきなり敗北する俺であった。
しかしまだ霧雨レベル。カッパを着るほどではない。
東北でも北に行くほど降水確率は下がるようなので、こりゃもう走って逃げるしかないな。

雨に追われてさっそく走り出したものの、気になるのは桜だ。
昨夜は暗くてよくわからなかったが、山を越えて福島県に入って以降、急に桜が咲かなくなったっぽい。
昨日の栃木まではほとんど満開か、散り始めぐらいだったのにな。
いやーしまった。
どうやら予想よりもずいぶんと早く、桜前線ってやつを追い越してしまったらしい。
近畿、北陸、関東と来て今は東北。
特に意識していたわけでもないが、俺は桜の開花地域をリアルタイムで出たり入ったりしているようだ。
こういう体験もなかなか珍しい。

しかしこの辺はほんと咲いてないなー。
お、あった。
川沿いに2本だけ満開の桜が見える。
颯爽と接近し、バイクを並べて写真を撮ろうとしていると、背後からおもむろに声がかかった。

「それはアンズ、あれはウメ。」

近所の家からじいちゃんが出てきて、解説してくれるのである。
それで、え?アンズとウメ?どっちも桜じゃないの?



桜ならウチにあるよ、と庭に招き入れてくれるじいちゃん。

鮮やかなピンク色の花だ。へー、これも桜なのか。
でもさっきの白っぽい花はアンズとウメ。
うーん植物は詳しくないのでよくわからん。
こりゃ北陸あたりで早咲きの桜を発見!なんて撮った写真も非常に疑わしくなってくるな。
今さら気にしないけど。

雨は降ってるような降ってないような。
しかし北の方角の空は明るい。呼ばれているようだ。
よし、呼ばれてあげようじゃないか。



さっさか走って仙台。

桜はいよいよ咲いていない。
南から桜前線と併走するには、バイクは速すぎるようだ。
じゃあどんな乗り物が最適なんだろうな。
やはり徒歩か、また一輪車?
五体投地でジワジワ競り合うのも見てみたい。(やりたくはない。)

ここらで、ちょうど東北家族旅行に出ているハズの、えふぅさんに連絡を取ってみる。
おぉ、平泉にいるらしい。
ここから北に100キロぐらいか。2時間ぐらいで行けそうな気もするな。

おっとバイクを止めてると雨が降る。さっきからずっとこうだ。
そうか。やはり雨雲は、俺とのチェイスを楽しみたいらしいな…。ニヒル復活。



平泉。

奥州藤原三代で有名な…というより、ピカピカで有名な中尊寺金色堂のあるところ。
ちなみに俺の半生における数少ない自慢は、
これまで平泉の前を何度も通ったのに中尊寺金色堂を拝観したことがないということだ。
『有料の寺なんか見てたまるか!』が永遠のスローガン。

ところで、えふぅさん一家は『毛越寺』というところにいるらしい。
思わずケゴシデラと読んでしまったが実はモウエツジか、と思ったら本当はモウツウジらしい。
読めるかそんなもん!

その毛越寺の門前にて、えふぅさん一家と再会。
父母に2女2男の家族6人はあいかわらず健康そうで、
それぞれ鮮やかな固有カラーの服を着ているのが戦隊モノのようでおもしろい。
きっと旅先などではこのコーディネートがもっとも大家族を管理しやすいのだろう。さすがである。

家族の皆さまが毛越寺(しつこいようだがモーツージ)を見物している間、
門外でえふぅさんと缶コーヒーミーティング。
これから数日かけて東北の海側を回るそうだ。
仕事に加えて子どもたちの卒業・入学で大変忙しい合間を縫ってでも家族全員を旅行に連れていく!
彼のこういうところは大好きである。
世の中には本当に、いろんな家族のあり方が存在するものだ。

さて、2人で缶コーヒーを飲んでいるうちに、また雨が降ってきた。
おっともう追いつかれたか!またすぐに引き離してやるぜ!ってことで、えふぅさんに別れを告げて出発。
よし。今回も金色堂には入らなかった。



盛岡。

雨はおそろしく正確に、俺がバイクを止めると降る。しばらく走るとやむ。
岩手の方言で、おにぎりのことを『にぎりっこ』というのは一昨年学習した。
そして今回は、船のことも『ふねっこ』ということを新たに確認。
いや、ホームセンターで喋ったおっちゃんに「おぅ、ふねっこで行ぐのかー。」って言われたんだよ。
なんでも『こ』って付くのはちょっと可愛くていいよな。
そういや北海道でも動物の赤ちゃんのことを『こっこ』って言うんだが、あれは…二重じゃないのか?

岩手県は素晴らしく長い。
そしてかくなる上は、ひたすら北上するしかない。
実は、今日が雨なら仙台から船に乗ってしまえばいいという考えもあった。
でも結局、今こうして長い岩手を走っている。
これが全てだ。
東北ツーリングって言い出したからには、やっぱ仙台では終われないよな。
常に脳内国会の多数決で勝ったことをやる。
なんて民主主義なんだろう俺。



そして19時過ぎ、青森県は八戸港にチェックイン。

思わずチェックインと書きたくなるのが八戸のフェリーなのである。
八戸港を22時に出航、苫小牧着が翌朝6時。
まさに宿がわり。これぞ伝説の一泊便!って毎回書いてるんだよ俺。フフ。そろそろ表彰して。

ここまで来たらもう北海道まで行きますわって感じだ。
旅なら旅で、悔いを残さぬように。


白い炎
2013/4/6(土) 午後 10:38

今夜、八戸から船で北海道に行くバイク乗りは俺だけらしい。
まあそんなもんだろう。俺だって気分で決めただけだし。
原付なら8500円で人馬一体となって北海道に行けるんだからお手ごろだよな。
しかも宿代コミ。

このフェリーに乗る時にバイクがいいのは、クルマよりも先に乗船できることだ。
そのぶん降りるのは最後になるんだが、別に急いでないのでまったくかまわん。
誰よりも早く車両甲板を駆け上がり、2等客室(雑魚寝部屋)の隅っこに陣取って、寝袋をかぶって寝る。
で、そこから1度も起き上がらなかった。
買っておいた食料も食わず、トイレにも行かず、海上にいる意識すらないまま、起きたら北海道。
さすがは伝説の一泊便である。

たどりついた北海道。
苫小牧港はなぜか雨。
北海道に渡れば雨から逃げ切れるハズじゃなかったのか。
だがおかげで気温は高めらしい。7度ぐらい?
道路上に雪もなく、これなら余裕である。
まずは遠回りになるが、札幌でも目指そうか。
最短ルートは高い峠があったりしてまだちょっとヤバそうだからな。



ほい、札幌。

冬の北海道の公園というのは、完全にタダの雪山か雪捨て場である。
春になってその雪山が硬くなっているらしく、
こんな山脈の上をサラリーマンの皆さまがガッシガッシと歩いて通勤しておられた。

それはいいんだが、北海道に来て悩ましいこと。
どれが桜かわからない。

もともと北海道には桜の木が少ないような気がする。
少なくとも本州のような鬼気迫る勢いでソメイヨシノを植えまくっている場所はさほど多くないだろう。
正確に桜の木がどんなものかよく知らなかった自分自身には福島あたりから失望していたが、
ここに来ていよいよ何を信じて進んでいけばいいのかわからなくなってきた。
うーーむ、まぁこれ、たぶん桜でしょ。
そんな感じで選び抜いた逸品。たぶん間違ってる。



札幌から国道12号というマトモな道を150キロぐらいまっすぐ走っていると、
そのうち勝手に旭川に着いてしまうのだ。

普通、旅のライダーというものは、北海道に来た初日に興奮度がマックスに達するものである。
しかし今じゃ北海道在住の俺としては、札幌以降になるといつもの道すぎてこれといった感動がない。
ここまで来れば俺の家ももうすぐだ。
できるだけ、潰れてなければいいなぁ、ぐらいには思う。



美瑛町に到着。

標高の高いこの町は、やはりまだ雪が多い。
このあたりの桜が咲くのはゴールデンウィークの頃。
まだ1ヶ月も先の話である。

しばらく家を空けて帰ってくるたびにいつも思うが、今回も意外とちゃんと家はあった。
しかし屋根から落ちた大量の雪が出入り口を塞いでおり、中に入る気には全然ならない。
さらに倉庫のシャッターを開けるのすら面倒だったので、
ここまでよく走ってくれたCD90は、美瑛町最強ニートの誉れ高いヨッシー宅に預けることにする。

神戸からここまで、6日かかったな。
距離はちょうど2000キロ。思ったよりは走っていた。
見た目こそお爺ちゃん専用バイクだが、隙のない防寒装備とムリのない乗車姿勢、
そしてツーリングでリッター平均55キロの燃費を醸し出すこのマシンは、まさしくツーリングバイクだ。
旅の相棒としてまったく申し分のない存在であった。
ありがとう!
おかげでまたいい旅ができた。

自分の住む町に何時間もいることなく。
バイクを離れ、旭川からバスに乗って札幌へ。
札幌駅近くのネットカフェで泊まって、翌朝は電車で千歳空港へ。
あとは飛行機の狭いシートにさえ座っていれば、自動的に神戸に運ばれる。
バスも電車も飛行機も、オートバイほどにはハシャげない。
きっと自分で方向を変えられない乗り物は苦手なのだろう。

行きは6日、帰りは2時間!の空の旅。
あっというまに神戸空港。
1週間ぶりに戻ってきた神戸は、ちょうど今が桜のピークのようだ。



駅から家まで歩くものの、防寒長靴が異常に暑い!
速攻で脱ぎ、久々登場の地下足袋に履き替える。
ふー、これで元の姿に戻った。

最初から意図していたわけでもなく、桜ばかり眺める旅になった。
ヒマつぶしという言葉は大嫌いだが、実際はそれに近いムードで始めたものだ。
また会った人。初めて会った人。長年の時を経て再会した人。
様々な出会いがあったな。
笑えるぐらい嬉しいことの連続でもあった。
これまでも今回も、出なければよかった旅というものはない。

これだけ桜を、ひたすら追い続けた旅があった。

そういうことは、なかなか、忘れないものだと思う。



お・し・ま・い



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